プロジェクトストーリー
建設機械の自動化を支える「電気制御化コントロールバルブ」開発の舞台裏
建設業界では今、人手不足の深刻化を背景に、建設機械の自動化・遠隔操作が急速に進んでいます。そうした変化を、部品開発の現場から支えているのがコムテスコです。
本インタビューでは、プロジェクトのメイン担当者である「S.F」さんに参加いただき、実際にその開発を担った技術者の視点から、プロジェクト立ち上げの背景や技術的な課題、量産化までの道のりを紐解いていきます。
プロジェクトの担当者
S.F
技術部第2技術課。
電気制御化コントロールバルブ開発を担当し、設計から量産立上げまでを推進。顧客・工場との調整を担う。
建設業界の課題から始まった、新たな制御技術への挑戦
このプロジェクトが立ち上がった背景を教えてください。
背景として一番大きかったのは、建設業界全体の変化です。これまでの建設機械は、人が操作する油圧制御システムの重機が中心でしたが、人手不足や高齢化の影響を受け、自動化や遠隔操作で操作できる重機のニーズが高まっています。
そして本プロジェクトの顧客様は、建設機械メーカーの中でも業界をリードする存在です。国が推進するi-ConstructionやICT化の流れを受け、建設機械の電気制御化を本格的に進めていました。その中で、建設機械の中核部品であるコントロールバルブについても、電気制御化への対応が必要になりました。
こうした背景のもと、電気制御化に対応できるコントロールバルブの開発パートナーとして、これまでの実績と技術力を評価いただき、コムテスコに開発の依頼がありました。
その中で、コムテスコが選ばれた理由は何でしょうか?
本プロジェクトのご依頼をいただいた顧客様とは、これまでも油圧制御のコントロールバルブを量産してきた実績がありました。加えて、受注前から定期的に技術交流会を行い、技術的な課題や方向性について率直に意見を交わしてきました。
こうした積み重ねによって、技術力だけでなく進め方や考え方も共有できていたことが、品質とスピードの両面で期待していただけた理由だと感じています。
初めての技術領域で求められたのは「スピード」と「確実性」
コムテスコとしても、新しいチャレンジだったのでしょうか。
そうですね。電気制御に関する基礎研究自体は行っていましたが、それをコントロールバルブに組み込み、量産まで持っていくノウハウは社内に十分に蓄積されていませんでした。
会社としても初めて本格的に取り組む技術領域だったと思います。また私自身にとっても、量産を前提に電気制御を扱うのは初めての経験でした。
顧客はどのような点に課題を感じていたのでしょうか。
顧客から特に強く求められていたのは、開発スピードです。
本プロジェクトは、2018年頃から構想・検討が始まり、段階的な開発や検証を経て、2024年8月に量産化を開始すると決まっていました。このように、建設機械全体の開発スケジュールや量産開始時期があらかじめ設定されており、途中で仕様検討や試作に時間がかかったとしても、最終的な工期を延ばすことはできない状況でした。
部品開発が遅れるとプロジェクト全体に影響が及ぶことから、「新しい技術を実現できること」だけでなく、手戻りなく、工期内に確実に量産までつなげられることが強く求められていました。
量産だけで終わらせない、将来を見据えたプロジェクト設計
プロジェクトのゴールはどのように設定していましたか。
顧客側のゴールは非常に明確で、要求仕様を満たした製品を、決められたスケジュール通りに量産開始することでした。
一方で、私たちコムテスコとしては、単に量産を達成するだけでなく、その先も見据えてプロジェクトに取り組んでいました。電気制御化コントロールバルブを安定して量産できる体制を確立すること、そして今後の需要拡大を見据え、設計ノウハウの蓄積や、組立・検査を行う工場環境を整備することです。
このプロジェクトを単発の案件で終わらせるのではなく、将来の事業展開につながる技術基盤を築くことも、重要な目標でした。
最も苦労した工程はどこでしたか?
やはりチューニングです。顧客からの要望に応じて、その都度部品を設計し直し、試作と評価を繰り返す必要がありました。
一度で狙い通りの結果が出ることはほとんどなく、再設計が続くとスケジュール管理も難しくなります。それでも顧客や工場と密に情報共有を行いながら調整を重ね、量産開始直前まで粘り強く対応することで、何とか納期に間に合わせることができました。
量産の成功が、次の開発と人の成長につながる
最終的な成果について教えてください。
まず、決められていた納期通りに量産化を実現できたことが、大きな成果です。当初の計画から遅れることなく、顧客の要求仕様を満たした製品を形にすることができました。
さらに本プロジェクトを評価され、新たに派生機種の開発もご依頼いただけました。ショベルのトン数や仕様が異なる機種に対応したコントロールバルブを展開しており、プロジェクトが一過性のものではなく、継続的な開発につながっています。
また、量産に合わせて電気制御化バルブ用の組立・試験ベンチを工場に新設しました。その結果、以降の電気制御バルブ開発や試験もスムーズに行える体制が整い、案件の拡大にもつながっています。
本プロジェクトを通じて、どのような成長がありましたか。
量産仕様が無事に確定し、顧客立ち会いの場で感謝の言葉をいただいたときは、これまでの苦労が報われたと感じました。開発の過程では苦しい場面も多かった分、その一言がとても印象に残っています。
また、今回のプロジェクトを通じて、電気制御バルブに関する技術的な知識が深まったのはもちろんですが、顧客や工場と丁寧にコミュニケーションを取りながら進めることの重要性も強く実感しました。私個人としても、タイトなスケジュールの中で、設計・試作・工場調整・顧客対応を同時に進めながら、全体を俯瞰して判断する力が身についたと感じています。
チームで挑むからこそ、困難な開発は成功する
これから技術開発に挑む人へメッセージをお願いします。
スケジュールがすでに決まっている開発では、急な仕様変更や想定外の問題が必ず起こります。その難易度の高さから諦めそうになる場面もあると思いますが、そういうときこそ、今持っている情報を整理し、関係者と日頃からしっかりコミュニケーションを取っておくことが大切です。
コムテスコには、一人で抱え込まず、周囲と連携しながら課題に向き合える環境があります。そうした関係性の積み重ねが、困難なプロジェクトを最後までやり切り、次の挑戦へつなげていく原動力になると思います。
